幼虫移行症
動物に寄生している寄生虫(回虫や鈎虫など)の卵や幼虫が、人間の体内に入り、幼虫が人の体に寄生して起こるさまざまな症状を幼虫移行症といいます。
ペットのフン便から、何らかの経緯で人の体内に侵入した回虫は、成虫になれずに体内を移行して内臓や眼に入り、さまざまな障害を引き起こします。一般に虫卵で汚染されている野菜を生のまま、十分に加熱しないで食べた場合や、汚染された土や砂、水との接触などが感染経路となります。飲食物などを介して口から感染(経口感染)ます。
幼虫が侵入する臓器によって症状が異なり、肝臓では肝酵素測定値の上昇、肺では咳や喘鳴(ぜんめい)を、脳に達すればてんかん様発作の原因となり発熱や全身の倦怠感、食欲不振などがあると言われています。
眼球に移行した場合、網膜脈絡炎、ブドウ膜炎、網膜内腫瘤、硝子体混濁、網膜剥離による視力・視野障害、霧視(むし)、飛蚊(ひぶん)症など深刻な症状が出ることがあるため注意が必要です。
組織内に寄生した幼虫に対しては、確実な治療法は存在せず、眼に移行した場合の治療法も確立していません。子供への感染が多くみられますので、犬と遊んだりや砂遊びをした後や食事の前には必ず手洗いを励行させてください。犬や猫の便も速やかに片づける様しましょう。犬や猫を飼われている方は、動物病院で定期的に検便をするなど、寄生虫駆虫に気をつけてください。